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息も、できない。

 

 

死んでもいいって、思ってた。

 

 

 

それは死んでも後悔しないって意味かもしれないし

 

 

 

一度は死んだようなものだなんて意味かもしれないし

 

 

 

死んでもいいと思えるような誰かがいたせいなのかもしれない。

 

 

 

二度目の、死。

 

 

 

息を漏らす事すら躊躇われる、張りつめた空気。
危険が飽和して破裂してしまいそうな緊張感を作り出していたのは、目の前の男が構える一挺の銃。
その引鉄に手をかけずとも、この指が一本、足が一歩、肩が一度傾くだけで、導かれた死に火が点いてしまいそうだった。

 

 

 

記憶に生温く膜を張る、それでもまだ新鮮な今日起きた出来事。
それが夢か現かわからず脳裏で反芻される内、先程から、そしてこれから自分が確認しようとしている事が途端に馬鹿馬鹿しく思えて、どうにも一人で座るこの空間が居心地悪く、馬車の窓を開けた。

 

 

 

それから意味もなく、足を広げて大仰に腕を組む。
自分でそう思うくらいだから、本当に意味はないのだ。

 

 

 

「オレは、今日、また、死ぬかもしれなかった」

 

 

 

一言、一言、噛みしめるように言葉を放り投げてみる。
その独り言が随分と大きく響いたような気がして、一層恥ずかしくなった。
うなだれて、ふぅ、と嘆息を漏らす。

 

 

 

「いや・・・さすがにあそこで死んじゃあ・・・ダメだろ」

 

 

 

『愛を勘違いした男、拳銃片手にシスターに求愛を試みるも、某伯爵家次男に誤射』ではオレの命も浮かばれない。
さすがにそれは、ごめんなさいシスターと言った所で怒られるだろう。
よしんばあの世とやらに行ったところで、なんで連絡も寄こさずにいきなり来るんだよ!少しは人の迷惑も・・・って父上は言わないか。

 

 

 

満天の星に彩られた静謐な夜。
馬車はいつもの行程より幾分か速く、目的地へと走っていく。
急遽別件ができたためだ。
決して恥ずかしくなってアルセーヌから逃げてきたためじゃない。

 

 

 

各々の思惑が様々な誤解を生み方々に乱反射していった今回の一件。

 

 

 

エリスは、無事だった。
修道院の皆も、無事だった。
オレは・・・結局何もしてないが無事だった。

 

 

 

命を惜しんでいるわけじゃない。
一度と言わずもう何度も拾われた命だ。
オレの命が誰かの命を拾う事もあるだろう。

 

 

 

「でもまぁ・・・軽挙は控えよう」

 

 

 

泣きながらであれ、笑いながらであれ。
おかえり、と迎えてくれる幼馴染み達がいる。
少し、自分も大事にすることにしよう。
じゃないと・・・アルセーヌ流の、あの少々手荒な体当たり付きの再会を喜べないから。

 

 

 

・・・ん?

 

 

 

空気が、張り詰める。
目の前で銃を突きつけられる、それに勝るとも劣らない、死の予感。
想像するだけで身が灼けるような緊張感を生む。
一日に二度もこんな気持ちを味わうなんて。

 

 

 

こくり、と喉が鳴る。
その音が、確かに聞こえた。

 

 

 

「・・・ガルトの場合も・・・なのか?」

 

 

 

・・・おかえり、まで生きていられるだろうか。
徐々に深まる夜陰の中、そういえばコレットがガルトとの再会を楽しみにしていたよな、と何度も頷いた。

17:00 ゲスト クライド・ハンニバル・ドーソン comments(0)
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